なぜ本とタバコはセールしない?意外と知らない「価格」の話

スーパーやドラッグストアへ行くと、

「本日20%OFF」
「特売98円」
「2個買うと100円引き」

といった値引きやセールをよく見かけます。

ところが、本屋さんの本や雑誌、コンビニで販売されているタバコでは、ほとんど「20%OFFセール」を見かけません。

同じ「商品」なのに、なぜなのでしょうか?

結論からいうと、商品によって「販売価格を誰が、どのようなルールで決めるのか」が違うからです。

一般的な商品は販売店が価格を決められるのに対し、本などの一部の著作物には「再販制度」という仕組みがあり、タバコには法律に基づく「小売定価」があります。

そして、この価格の話は美容室で販売するシャンプーやトリートメント、ドライヤーなどの「店販」にも大きく関係しています。

今回は、意外と知らない「価格の仕組み」について考えてみます。

普通の商品は誰が販売価格を決めるの?

食品、日用品、家電、化粧品など一般的な商品の販売価格は、基本的に販売店が自主的に決めます。

たとえばメーカーが、

「メーカー希望小売価格10,000円」

と設定していたとしても、これは文字どおりメーカーが「このくらいの価格で販売してほしい」と示している参考価格です。

販売店が9,000円で販売するのか、8,000円で販売するのか、あるいは期間限定で20%OFFにするのかは、原則として販売店自身が判断します。

公正取引委員会も、メーカー希望小売価格などを示すこと自体は通常問題にならない一方、販売店が自由に価格を決められないようメーカーが価格を拘束する行為は、原則として独占禁止法上の「再販売価格の拘束」に当たり得るとしています。

つまり、

「メーカー希望小売価格10,000円」

と、

「絶対に10,000円で売ってください」

は、似ているようでまったく意味が違うのです。

なぜ本や雑誌は値引きされないの?

では、なぜ本屋さんでは「小説20%OFF」「雑誌30%OFF」といったセールをほとんど見かけないのでしょうか。

その理由が、**「著作物再販制度」**です。

通常、メーカーや供給者が販売店の販売価格を拘束することは原則として認められていません。

しかし、書籍・雑誌・新聞など一定の著作物については、独占禁止法上の例外が設けられています。

出版社などの発行者が設定した価格を、書店などの販売店が維持する契約を結ぶことが認められているのです。

そのため、東京の書店でも大阪の書店でも、基本的に同じ本は同じ価格で販売されています。

本は法律で「必ず定価販売」と決められているわけではない

ここは少し誤解されやすいポイントです。

「本は法律で値引き禁止」

と単純に決められているわけではありません。

著作物再販制度を利用するかどうかは事業者の判断であり、再販契約の内容によっては、一部の商品を対象外にしたり、一定期間後に値引きを認めたりすることも可能です。

だから古本や一部のバーゲンブックなどでは、定価とは違う価格の商品を見ることもあります。

「本には、一般の商品とは違う価格維持の仕組みが認められている」

と理解すると分かりやすいでしょう。

なぜタバコは値引き販売できないの?

タバコは、本とはさらに仕組みが違います。

製造たばこには、たばこ事業法に基づいて財務大臣の認可を受けた**「小売定価」**があります。

そして小売販売業者は、認可された小売定価によらずに製造たばこを販売することはできません。

つまりコンビニが独自に、

「今日はタバコ20%OFF!」

「2箱買ったら100円引き!」

といった価格設定をすることはできないのです。

財務省も、認可された小売定価以外の価格で販売することは、たばこ事業法に違反すると説明しています。

本の再販制度とは似ているように見えますが、仕組みは別物です。

「定価」「メーカー希望小売価格」「小売定価」は同じではない

普段何気なく使っている「定価」という言葉ですが、商品によって意味はかなり違います。

一般的な商品では「メーカー希望小売価格」が設定されていることがありますが、基本的には参考価格です。

一方、本など一部の著作物には再販制度があり、出版社などと販売店との契約によって価格が維持される仕組みがあります。

そしてタバコには法律に基づいて認可された「小売定価」があります。

同じ値札に書かれた「価格」でも、その裏側にあるルールはまったく違うのです。

では、美容室の商品は値引きしてもいいの?

ここから美容業界の話です。

美容室では、

シャンプー、トリートメント、スタイリング剤、ヘアオイル、ドライヤー、ヘアアイロン、美容機器など、さまざまな商品を販売しています。

こうした一般的な美容商品にも「メーカー希望小売価格」が設定されていることがあります。

しかし、一般の商品であれば、メーカー希望小売価格は基本的にメーカーが示す参考価格です。

販売店である美容室が実際にいくらで販売するかは、原則として販売店自身が決めます。

そのためメーカー側が、

「この価格より1円でも安く売ったら商品を出荷しません」

などと実効性を伴って販売価格を拘束すれば、独占禁止法上問題となる可能性があります。公正取引委員会も、指定価格を守らない販売店への出荷停止などによって価格を守らせる行為を「再販売価格の拘束」の例として説明しています。

美容業界でよく耳にする、

「定価を守ってください」

という言葉も、単なるお願いなのか、実際に販売価格を拘束するものなのかによって意味が変わってきます。

では、美容室は商品を安く売った方がいいのか?

ここが商売の面白いところです。

「安く売ることができる」ことと、「安く売った方がいい」ことは別問題です。

たしかに20%OFFにすれば、商品は売れやすくなるかもしれません。

しかし値下げを繰り返していると、

「あのお店は安いから買う」

というお客様が増えていきます。

これは一見すると良いことのようですが、見方を変えると、

「もっと安いお店があれば、そちらで買う」

ということでもあります。

ネット通販で同じ商品が数百円安く販売されていれば、お客様がそちらへ移ってしまう可能性もあります。

価格だけで勝負し続けるのは、かなり苦しい戦いです。

美容室の商品販売にはネット通販にはない価値がある

では、美容室の商品販売にはどんな強みがあるのでしょうか。

それは、「商品」だけを販売しているのではないということです。

美容師さんは、お客様の髪質、ダメージ、カラー履歴、頭皮の状態、普段のスタイリング方法まで実際に見ることができます。

そのうえで、

「今の髪なら、このシャンプーが合いますよ」

「毛先だけこのトリートメントを使ってください」

「このオイルなら、これくらいの量で十分ですよ」

と提案できます。

これはネット通販では簡単に真似できない価値です。

お客様が買っているのは、シャンプー1本だけではありません。

美容師の知識、診断、提案、使い方、そして信頼まで含めて商品を買っている。

そう考えると、美容室の商品販売は単純な価格競争とは少し違って見えてきます。

「安いから買う」から「あなたから買いたい」へ

物価が上がると、どうしても私たちは「価格」に目が向きます。

お客様も、

「少しでも安く買いたい」

と考えるでしょう。

だからといって、すべての商品を値下げする必要があるのでしょうか。

むしろ美容室では、

「なぜこの商品があなたに必要なのか」

「使うと髪がどう変わるのか」

「どのように使えば一番効果的なのか」

を伝えることの方が重要なのかもしれません。

同じ5,000円の商品でも、

棚に置いてあるだけの5,000円と、

自分の髪をよく知っている美容師さんから、

「あなたにはこれが合いますよ」

と提案された5,000円では、お客様が感じる価値は違います。

価格を下げる前に「価値」を上げられないか考える

値下げは、とても分かりやすい販売促進です。

10%OFF。

20%OFF。

半額。

数字を見れば、お得なのはすぐに伝わります。

一方で、商品知識や提案力、信頼といった価値は数字では見えにくいものです。

だからこそ、美容室の商品販売では、

「いくら安くするか」ではなく、「なぜこの価格でも買いたいと思ってもらえるか」

を考えることが大切なのではないでしょうか。

商品を安くすることは、一瞬でできます。

でも、お客様から、

「あなたが勧めてくれた商品だから買いたい」

と思ってもらえる関係をつくるには時間がかかります。

その代わり、その価値は簡単には価格比較されません。

まとめ|価格には「数字」だけでは見えない理由がある

本が安売りされにくいのは、著作物再販制度という仕組みがあるから。

タバコが値引き販売されないのは、法律に基づいて認可された小売定価で販売する必要があるから。

そして一般的な商品は、原則として販売店が販売価格を自主的に決めます。

同じ「商品を売る」という行為でも、価格の決まり方は商品によって違います。

そして美容室の商品販売で本当に考えたいのは、法律上いくらで売れるかだけではありません。

「いくらで売るか」より、「なぜその価格で買ってもらえるのか」。

物価が上がり、ネットですぐに価格比較できる時代だからこそ、この視点はますます重要になっていくのではないでしょうか。

価格を下げる前に、

「この商品を、うちのサロンから買う理由は何だろう?」

一度考えてみると、店販の見え方が少し変わるかもしれません。

よくある質問

Q. メーカー希望小売価格より安く販売してもいいのですか?

一般的な商品では、メーカー希望小売価格は基本的に参考価格であり、販売店が自主的に販売価格を決めます。ただし、商品や契約、販売方法によって個別の条件がある場合もあるため、実際の取引では契約内容の確認が必要です。

Q. メーカーが販売店に値下げを禁止することはできますか?

一般の商品について、メーカーが販売価格を指定し、それを守らせる行為は「再販売価格の拘束」として原則禁止されています。ただし、書籍など一部の著作物には例外があります。

Q. なぜ本はどこの書店でも同じ価格なのですか?

書籍など一定の著作物には「著作物再販制度」があり、出版社などと販売店との契約によって価格を維持することが認められているためです。

Q. なぜタバコはコンビニごとに価格が違わないのですか?

製造たばこには財務大臣の認可を受けた小売定価があり、小売販売業者はその認可された価格で販売する必要があるためです。

Q. 美容室の商品販売で大切なことは何ですか?

価格だけで競争するのではなく、お客様の髪質や状態に合った商品選び、正しい使い方の説明、アフターフォローなど、ネット通販では提供しにくい「美容師だから提供できる価値」を伝えることが重要です。