失敗する経営者は「成功例」ばかり見る。生き残るサロンが実は見ている「死者のデータ」
生存者バイアスとは?ビジネスに潜む落とし穴と成功への正しい判断法
経営者やビジネスリーダーとして、意思決定を行う際にどのように成功事例を活かすべきか。しかし、見逃してはいけない重要なポイントが「生存者バイアス」です。
このバイアスが意思決定に与える影響を理解し、成功事例だけにとらわれない冷静な判断をすることが、ビジネスの成長に欠かせません。
この記事では、生存者バイアスの概念をわかりやすく解説し、現代のビジネスにおける実例を交えて説明します。

戦争中の戦闘機に学ぶ生存者バイアス
生存者バイアスという考え方は、第二次世界大戦中に戦闘機の損傷分析から生まれました。
当時、帰還した戦闘機の弾痕が多い部分に装甲を追加すれば被弾から守れると考えられていました。しかし、統計学者アブラハム・ウォールドは「帰還した戦闘機は、弾痕が多い部分に被弾しても生還できた。強化すべきは、弾痕が少ない、被弾したら帰還できなかった部分だ」と指摘しました。
この例からわかるように、成功(帰還した)事例にばかり注目し、失敗(帰還できなかった)事例を無視することが生存者バイアスの典型的な例です。

つまり、この被弾の少なかったコックピットと尾翼に装甲を強化すれば、撃墜されずに帰還する戦闘機が増えると考えた。
現代ビジネスにおける生存者バイアスの具体例
ビジネスの世界でも、この生存者バイアスは知らず知らずのうちに意思決定に影響を与えることがあります。以下は現代における具体的な事例です。
1. 宝くじ販売所の「当選者」宣伝
よく「この宝くじ販売所から○億円の当選者が出ました!」という看板を目にすることがあります。この宣伝を見ると、「この販売所で買えば自分も当たるかもしれない」と感じるかもしれません。しかし、これは生存者バイアスが働いています。
実際には、その販売所で購入した多くの人々が外れている事実が無視されています。看板にある当選者は「生存者」であり、膨大な数の外れた宝くじは見えないままです。どの販売所で買っても当選確率は変わらないにもかかわらず、特定の販売所が特別なものとして見えてしまうのです。

2. 予備校の「合格率」宣伝
予備校の広告でも同様です。「東大合格者○○人!」という宣伝を見て、「この予備校に通えば自分も合格できる」と感じるかもしれません。
しかし、ここでも合格した生徒(生存者)だけが強調され、合格できなかった生徒たちの情報はほとんど見えません。
これもまた、生存者バイアスによるものです。成功事例に基づいて結論を出すのではなく、全体のデータを見て、成功に至らなかったケースも分析することが重要です。

生存者バイアスを回避するためのビジネス戦略
ビジネスにおいて、生存者バイアスを回避するためには、次のようなアプローチが有効です。
- 失敗事例を分析する
成功した事例だけにとらわれず、失敗事例にも目を向けることが大切です。特に、同じ戦略を取って失敗した企業やプロジェクトを分析することで、リスクや改善点を発見できます。 - 幅広いデータに基づく判断
数少ない成功事例に依存するのではなく、成功と失敗の両方を含む幅広いデータを収集し、バランスの取れた判断を下すことが重要です。 - 冷静なリスク評価
成功事例だけに基づいた楽観的な判断を避け、リスク評価を正確に行うことが、長期的なビジネスの成功につながります。
まとめ
生存者バイアスは、成功事例に偏って判断を誤るリスクを引き起こします。このバイアスを意識し、失敗や全体像を正しく理解することで、経営者としてより賢明な意思決定が可能になります。宝くじ販売所や予備校の例からもわかるように、成功事例に目を奪われるだけでは不十分です。
バイアスに惑わされない判断力を養い、成功と失敗の両面を考慮することが、ビジネスの成長とリスク回避に不可欠です。

