【ビジネスの成功法則】掛布雅之さんに学ぶ「絶好調の罠」|うまくいっている時ほど変えすぎるな

はじめに

調子が良い時に新しいことへ手を出し、本来の型を崩してしまう「絶好調の罠」。掛布雅之さんの野球の考え方を、サロン経営やビジネスへ応用し、好調を長く続ける方法を解説します。

失敗は、調子が悪い時に起こるものだと思っていませんか?

実は、ビジネスで大きく崩れるきっかけは、絶不調の時ではなく、絶好調の時に生まれることがあります。

売上が伸びている。

予約が埋まっている。

新規客が増えている。

新しく始めたサービスも評判がよい。

このような時、人は自信を持ちます。自信を持つこと自体は悪くありません。

しかし、

「今なら、これもできる」

「もう一つ新しいことを始めよう」

「今までのやり方を大きく変えても大丈夫だろう」

と、成功を生んだ本来の型にまで手を加えると、歯車が狂い始めます。

これが、掛布雅之さんの話から学べる**「絶好調の罠」**です。

掛布雅之さんが語る「絶好調の罠」とは?

掛布雅之さんは、阪神タイガースの主力打者として活躍し、通算349本塁打を記録。2025年には野球殿堂入りを果たした、日本を代表する野球人です。

その掛布さんが語る「絶好調の罠」の要点は、次のようなものです。

調子が悪い時ではなく、何をやってもうまくいく絶好調の時に、普段やらないことへ手を出してしまう。すると、それまで結果を出していた自分の型が崩れ、調子まで失ってしまう。

※上記は「絶好調の罠」という考え方の要旨を整理したもので、掛布さんの発言をそのまま引用したものではありません。

バッターが絶好調の時は、どのコースの球にも対応できるように感じます。

そこで、もっと飛ばそう、もっと広角に打とう、今までとは違う打ち方も試そうと、本来のスイングへ余計な動きを加えてしまう。

最初は能力の高さで対応できても、少しずつタイミングや体の使い方がずれ、気づいた時には元の感覚へ戻れなくなることがあります。

これは、ビジネスでもまったく同じです。

2025年 野球殿堂入り発表|野球殿堂博物館

なぜ、好調な時ほど判断を間違えるのか

1.自分の実力を過大評価しやすい

結果が出続けると、すべてが自分の判断力や能力によるものだと考えやすくなります。

しかし、実際の成功には次のような外部要因も含まれています。

  • 市場全体が伸びていた
  • 季節需要が高まっていた
  • 競合店が一時的に弱っていた
  • 人気商品やトレンドに乗っていた
  • 優秀なスタッフが支えていた
  • 偶然よいタイミングが重なった

外部要因まで自分の実力だと思い込むと、「次も必ず成功する」と判断し、投資や事業拡大が大きくなります。

2.成功した本当の理由を確認しなくなる

売上が伸びている時は、細かな分析をしなくても問題が見えません。

「結果が出ているのだから、今の判断は正しい」と考えるからです。

しかし、売上が伸びた理由は一つとは限りません。

  • 客数が増えたのか
  • 客単価が上がったのか
  • 値上げの効果なのか
  • 一時的なキャンペーンなのか
  • 大口客が増えただけなのか
  • リピート客が増えたのか

理由を確認しないまま新しい施策を重ねると、何が成功を生んでいたのか分からなくなります。

3.リスクが小さく見える

好調な時は、資金にも気持ちにも余裕があります。

そのため、新しい設備、新商品、新サービス、新店舗、新システムなど、普段なら慎重に考える投資も魅力的に見えます。

一つひとつは正しい判断でも、同時に始めれば組織の負担は急激に増えます。

4.周囲が反対しにくくなる

経営者や上司の判断が連続して当たっていると、スタッフは意見を言いにくくなります。

「社長が今まで成功してきたから、今回も大丈夫だろう」

「反対したら、消極的だと思われそう」

こうして組織からブレーキ役がいなくなり、問題が見えていても止められなくなります。

5.変化の悪影響が遅れて表れる

新しい施策を始めても、売上はすぐには落ちないことがあります。

既存客、予約残、過去の評判など、それまで積み上げた力が支えてくれるからです。

しかし、その間に接客品質、スタッフの疲労、待ち時間、在庫、利益率などが少しずつ悪化します。

売上が落ち始めた時には、どの変更が原因だったのか分からない。これが絶好調の罠の怖さです。

美容室で起こりやすい「絶好調の罠」

あるサロンで、売上も予約も好調になったとします。

オーナーは勢いに乗り、短期間で次の施策を始めました。

  • 新しい高単価メニューを導入
  • 予約管理システムを変更
  • 店販商品を大幅に増やす
  • 新しいキャンペーンを開始
  • SNSの投稿頻度を増やす
  • 営業時間を延長
  • スタッフの担当や役割を変更

どれも、単独で見れば悪い施策ではありません。

しかし、全部を同時に進めると現場は混乱します。

  • 新メニューの説明が統一されない
  • システム操作に時間がかかる
  • 商品知識を覚えきれない
  • キャンペーン内容をスタッフが把握できない
  • 待ち時間が長くなる
  • お客様への気配りが減る
  • スタッフの残業や疲労が増える

やがて口コミ、再来店率、接客品質が下がり、売上まで落ち始めます。

問題は、新しい施策を始めたことではありません。

成功を生んでいた型を守らず、複数の変更を同時に加えたことです。

売上が伸びていても、利益が伸びているとは限らない

絶好調の時に特に注意したいのが、売上だけを見て判断することです。

売上が増えていても、次のような状態になっている可能性があります。

  • 値引きやクーポンで客数だけ増えている
  • 低粗利の商品構成が増えている
  • 残業代や人件費が増えている
  • 広告費が売上以上に増えている
  • 在庫が積み上がっている
  • 忙しさで再来店の案内ができていない
  • 一部の大口顧客へ依存している

売上が絶好調に見えても、粗利益、営業利益、キャッシュフローが悪化していれば、会社の体力は落ちています。

「忙しいのに、お金が残らない」という状態は、絶好調ではありません。絶好調に見えるだけです。

好調時に絶対に守るべき「勝ちパターン」

新しいことを始める前に、現在の成功を生んでいる要素を書き出します。

1.誰に選ばれているのか

  • どのようなお客様が増えているか
  • 新規客と既存客のどちらが伸びているか
  • どの年代、悩み、地域のお客様に支持されているか

2.何が評価されているのか

  • 技術力
  • 接客
  • カウンセリング
  • 価格
  • 通いやすさ
  • 商品提案
  • スタッフとの関係性

3.どの工程が品質を支えているのか

  • 予約時の対応
  • 来店時の確認
  • カウンセリング
  • 技術工程
  • 仕上がり確認
  • 次回来店の提案
  • アフターフォロー

4.誰が支えているのか

売上をつくっている担当者だけでなく、予約管理、準備、片付け、在庫、教育などを支える人も確認します。

特定のスタッフへ負担が集中している場合、その人が疲れたり退職したりすれば、好調は一気に崩れます。

5.どの数字が先に動くのか

売上は結果として最後に表れる数字です。

その前に変化する数字を見つけます。

  • 次回予約率
  • 再来店率
  • キャンセル率
  • 待ち時間
  • 客単価
  • 粗利益率
  • 店販売上率
  • クレーム件数
  • 残業時間
  • スタッフの欠勤や離職兆候

成功の型が言語化できれば、守るべきものを残したまま改善できます。

好調を崩さず成長する6つの方法

1.まず「今、何がうまくいっているか」を記録する

調子が崩れてから元へ戻そうとしても、元の状態を記録していなければ再現できません。

好調な時こそ、施術工程、接客方法、役割分担、数字、使用しているツールなどを残します。

野球で言えば、好調時のフォームを映像に残すようなものです。

2.変えるものと守るものを分ける

すべてを改善対象にしてはいけません。

守るもの小さく変えてよいもの
お客様から評価されている接客POPの表現
安定している施術工程案内するタイミング
再来店につながる仕組みLINE文章の見出し
利益を生む主力メニュー新メニューの体験枠
スタッフの得意分野一部の役割分担

本体を壊さず、まず周辺から改善します。

3.一度に変えるのは一つだけ

新メニュー、価格、広告、予約システムを同時に変更すると、結果が良くても悪くても原因が分かりません。

変更は原則として一つずつ行い、実施前後の数字を比較します。

これだけで、改善の精度は大きく上がります。

4.小規模なテストから始める

いきなり全顧客、全スタッフ、全店舗へ展開せず、条件を限定します。

  • 対象客を10人に限定する
  • 担当スタッフを1人にする
  • 期間を2週間にする
  • 1店舗だけで試す
  • 予算上限を決める

成功すれば広げ、問題があれば修正します。

5.売上以外の数字も確認する

新しい施策で売上が増えても、利益や現場負担が悪化していれば成功とは言えません。

施策を評価する時は、最低でも次の項目を確認します。

  • 売上
  • 粗利益
  • 必要な作業時間
  • お客様の満足度
  • 再利用・再来店
  • スタッフの負担

6.始める前に撤退条件を決める

新しい施策は、始める条件より、やめる条件を決める方が重要です。

たとえば、

1か月試し、利用者が10人未満なら内容を見直す。
粗利益が基準を下回れば価格を修正する。
待ち時間が10分以上増えれば工程を止める。

と決めておきます。

好調時は自信があるため、失敗を認めるのが遅れやすくなります。先に基準を決めれば、感情ではなく数字で判断できます。

「変えない」と「成長しない」は違う

絶好調の罠を避けるために、何も変えなければよいわけではありません。

市場、お客様のニーズ、技術、働き方は変化します。改善を止めれば、いずれ競争力を失います。

大切なのは、

勝ちパターンを捨てて変えるのではなく、勝ちパターンを守りながら小さく試すこと。

です。

「今のやり方は絶好調だから永久に変えない」では、ただの慢心です。

「絶好調だから全部変えても成功する」も、同じく慢心です。

守る部分と試す部分を分ける。それが、好調を長く続ける経営です。

経営者が好調時に自分へ聞く7つの質問

新しい施策へ手を出す前に、次の質問を確認してください。

  1. 今の好調を生んでいる一番の理由は何か?
  2. 新しい施策は、その強みを壊さないか?
  3. 本当に今やる必要があるか?
  4. 一度に複数のことを変えようとしていないか?
  5. 小さく試す方法はないか?
  6. 売上以外に、どの数字で判断するか?
  7. どの状態になったら中止するか?

この7つに答えられないなら、まだ始める時ではありません。

管理職の仕事は、アクセルだけでなくブレーキも持つこと

会社が好調な時、経営者は前へ進みたくなります。

その時、管理職まで同じ勢いでアクセルを踏めば、組織にブレーキをかける人がいなくなります。

管理職は、新しい提案を否定するのではなく、次の点を確認する必要があります。

  • 現場の作業は何時間増えるか
  • 誰が責任を持つか
  • 既存業務の何を減らすか
  • スタッフは理解できているか
  • お客様にどのような価値があるか
  • 利益はどれくらい残るか
  • 問題が起きた時に元へ戻せるか

好調な経営者へ反対意見を伝えるのは簡単ではありません。

しかし、会社を守る管理職には、「今やるべきではない」「まず小さく試すべきだ」と数字と事実で伝える役割があります。

今日からできる「絶好調を守る」30分チェック

現在うまくいっている事業や店舗について、次の内容を書き出してみましょう。

10分:勝ちパターンを書く

  • なぜ選ばれているのか
  • どの顧客が増えているのか
  • どのメニュー・商品が利益を生んでいるのか
  • どのスタッフ・工程が支えているのか

10分:崩れ始めのサインを決める

  • 再来店率の低下
  • 粗利益率の低下
  • 待ち時間の増加
  • クレームの増加
  • 残業時間の増加

10分:次の改善を一つだけ選ぶ

  • 対象を限定する
  • 期間を決める
  • 評価する数字を決める
  • 中止条件を決める

新しいことを増やす前に、今ある成功が何によって生まれているかを確認する。それだけでも、絶好調の罠へ落ちる確率を下げられます。

まとめ|好調時こそ、型を崩さない

調子が悪い時は、誰もが慎重になります。

本当に注意すべきなのは、自信があり、資金があり、周囲も賛成してくれる絶好調の時です。

好調な時ほど、人は余計なことへ手を出しやすくなります。

そして、成功を生んでいた型を崩してから、その価値に気づきます。

掛布雅之さんの「絶好調の罠」からビジネスが学べることは、シンプルです。

うまくいっている時ほど、変えすぎない。
勝ちパターンを守り、変化は一つずつ小さく試す。

成長とは、現在の強みを捨てて新しいことへ飛びつくことではありません。

今ある強みを正しく理解し、壊さずに磨き続けることです。

サロン経営、集客、店販、新サービスの導入などのお悩みは、美好屋商店までお気軽にご相談ください。

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